【学校では教えてくれない日本の神話】素晴らしい絵と文で再現された神話の世界

【学校では教えてくれない日本の神話】素晴らしい絵と文で再現された神話の世界

日本の古い神話や伝説に魅力を感じたことがあるでしょうか。日本神話には、壮大な冒険譚や人生に対する深い考察がたくさんあります。日本の歴史や文化を学ぶことは、自分の国を愛すること、ひいては自分を愛することにもつながります。

この記事では、国際アンデルセン賞受賞画家・赤羽末吉さんと、国際的に活躍する作家・舟崎克彦さんが全身全霊で創り上げた、自然体で健康的な神話の絵本をご紹介します。

日本神話とは

日本神話は、日本最古の歴史書である「古事記」「日本書紀」に由来する物語であり、神道や仏教の神話的要素が含まれています。日本神話に共通するテーマは、神々、王族、自然です。日本の神々には、海の神、山の神といった自然界の神、商売や学問の神、縁結びなどの人間関係の神など、種類もさまざまに数多くの神がいることから「八百万の神(やおろずのかみ)」と言われています。

日本の神話は難しそうだと敬遠されがちですが、このように多様なキャラクターが登場するため、実は魅力的な物語がたくさんあるのです。

学校では教えてくれない日本神話

欧米では、新約聖書、旧約聖書、それにギリシャ神話は必ず学校で習います。また、書店に行くと、子ども向けにわかりやすく書かれた絵本や書籍がたくさん並んでいます。一方、日本では、学校で日本神話を教えるカリキュラムはありませんし、書店で日本神話に関する絵本や書籍を見かけることもほとんどありません。残念なことに、日本人は子どもの頃から自分のルーツについて学ぶ機会がないのです。

ですから、日本神話は家庭で知る以外に方法はありません。これらの神話は、私たちの祖先が何を信じ、どのような社会規範を築いてきたかを知るための貴重な資料です。たとえそれが史実ではなく神話であったとしても、日本の歴史の背景にある精神文化や神話を知ることで、日本の文化や習慣をより深く理解できるようになるでしょう。先人たちが伝えてきた神話や伝承には、現代にも通じる本質的な考え方が含まれているのです。

現状、学校では教わることのできない日本神話。今回は、家庭で取り入れられる日本神話のおすすめ絵本を紹介します。

赤羽末吉さんの絵で見る日本神話の絵本!

赤羽末吉 絵
舟崎克彦 文
出版社:あかね書房

あかね書房から出版されている『日本の神話』は「くにのはじまり」「あまのいわと」「やまたのおろち」「いなばのしろうさぎ」「すさのおとおおくにぬし」「うみさちやまさち」が収録されています。

他の出版社からも日本神話の絵本はいくつか出版されていますが、さまざまな事情から廃盤になるなど、残念ながら、日本神話の絵本は、絶対数が少ないのが現状です。また、出版されていたとしても、物語が改変されて全く別もののストーリーになってしまっていることも少なくありません。(この辺は、親が本来の内容をある程度理解して正しいものを見極められる目を持つしかありません。)

あかね書房の日本神話シリーズは、1冊1冊の内容もさることながら、シリーズとして物語を揃えることができます。もちろん単体で買うこともできますが、物語は繋がっているため、シリーズで読むとより面白いでしょう。分かりやすい口語文で綴られた文章は、初めて日本神話に触れる子どもにもぴったりです。子ども向けでありながら、赤羽末吉さんの趣深い絵は日本神話の格調高さがあり、大人も画集のように楽しむことができます。

この絵本の付属冊子で、赤羽末吉さんは次のように語っています。

絵本の絵は、文の字づらだけを描くべきではない、文の字づらだけを説明する絵は、それは説明図であって絵ではない。絵は、文のいわんとする内容を掘り下げて、それを絵画的にイメージアップさせて、そのドラマの心を読者に訴えるものでなくてはならない。

実際、赤羽末吉さんの絵からは、時間や空間の流れが感じられ、映画を見ているような感覚にもなります。また、

子どもに見せるには、単純明快にドラマを語ることである。そのことによってドラマの内容が、強く心に残る。

とも語っています。この赤羽末吉さんの言葉の通り、作家の舟崎克彦さんによる文章は、読み聞かせている大人も心地よさが感じられます。

この絵本の魅力は、子どもが理解しやすい内容でありながら、日本神話特有の格調高さがあることです。これは、赤羽末吉さんと舟崎克彦さんによる幾度もの現地視察や調査資料での徹底的なリサーチと、想像力の賜物といえるでしょう。

日本の神話 ① くにのはじまり

日本神話には、世界の神話と共通するテーマが多くあり、イザナギとイザナミによる世界の創造は、アダムとイブの物語に似ています。つまり、世界の創造もそこに住む人々も、男女のペアを必要としたのです。イザナミが死後イザナギと一緒に帰れない理由は冥界の食べ物を食べたからであり、ギリシャ神話のペルセポネがハデスに拉致されたのも、冥界の食べ物を食べた人に影響があるという考えと似ています。ストーリーの展開に違いはあっても、これらの物語が共通して示すのは「人間はこの世で我慢が足りない生き物である」ということです。

本作『くにのはじまり』では、国生みのダイナミックな手法、そこから生まれる現世と黄泉の国の重なり合い、森羅万象に命を吹き込む強いイマジネーションが刺激的です。生命の神秘、果てしない無常観、そして何よりも教育では得られない「人の世の絶対矛盾」を知ることができます。

伊邪那岐(いざなぎ)と伊邪那美(いざなみ)の神は、天の浮橋(あめのうきはし)に立って、目の前にただようものの中に矛(ほこ)をさしこんで、かきまわし、陸地をつくりました。

あかね書房公式ホームページより

日本の神話 ② あまのいわと

この物語は、大自然の威力と恵みをテーマにしており、光と闇、嵐と静寂という自然界の両極の力の対立が語られています。太陽への崇拝は、ギリシャのアポロンからエジプトのラーまで共通するものです。女性のアマテラスと男性のツクヨミのように、太陽と月が兄妹であるという考え方は、ギリシャ神話のアポロンとアルテミスの兄妹にも一致します。

須佐之男(すさのお)の命(みこと)のあまりの乱暴ぶりを見かねて、日の神天照(あまてらす)が岩戸にかくれてしまったので、世界は暗闇にとざされてしまいました。

あかね書房公式ホームページより

日本の神話 ③ やまたのおろち

須佐之男命(スサノオ)のヤマタノオロチ退治は、中世ヨーロッパの竜退治伝説の別バージョンとして、クシナダヒメを悩める乙女に、スサノオをその騎士に見立てることができます。また、ギリシャのペルセウスが生け贄にされたアンドロメダを救うために海蛇を退治した伝説ともうまくマッチしており、ペルセウスとアンドロメダは、ペルセウスに助けられた後、結婚します。ヤマタノオロチ自体は、複数の頭を持つ大蛇という点で、ヒドラと似ています。

こうした西洋の神話にもどこか通じる壮大な叙事詩「ヤマタノオロチ」は、古代の人々が自然の恵みと豊穣を謳歌した牧歌的な姿であり、生きることへの強い意志と健全な創造力が結実したものです。古来より語り継がれる壮大なアクションに、親子で浸ってみてはいかがでしょうか。

須佐之男(すさのお)の命(みこと)は、乱暴のあまり出雲の国に追われ、櫛稲田姫(くしなだひめ)がやまたのおろちのいけにえにされようとするところに出会います。

あかね書房公式ホームページより

日本の神話 ④ いなばのしろうさぎ

本作の「いなばのしろうさぎ」は、特筆すべき点がいくつかあります。まず、ウサギの皮を剥いだワニは、爬虫類のワニではなく、魚類であるサメとして扱われている点です。第二に「しろうさぎ」は「白」ではなく、「素」のうさぎとして描かれていることです。

ワニかサメかについては様々な議論がありますが、本作では出雲での調査から「ワニ鮫」と解釈されています。命は、うさぎにガマの穂に包まれることを教えます。古来より、ガマの穂の花粉は傷の薬とされてきました。また「いなばのしろうさぎ」の話は、東南アジアの各地にあり、それがそのまま日本に伝わったのではないかという説もあるようです。

動物が出てくることから、6冊の中でも比較的子どもに親しみやすいお話です。

小島に住むうさぎは、陸地にわたるため、さめをだますことにしました。数をかぞえるからと、さめを陸地まで一列に並ばせて……。

あかね書房公式ホームページより

日本の神話 ⑤ すさのおとおおくにぬし

須佐之男命による大国主命の試練は、その試練が不可能とされ、試される者の死に至る可能性が高いという点で、ヘラクレスの試練と似ているところがあります。八上水命が見せた驚くべき力業も、規模ははるかに大きいものの、ヘラクレスの功績のいくつかに匹敵するものです。

『すさのおとおおくにぬし』では、自立は闘うことによって勝ち取るものであり、譲った側は相手の強さと未来を祝福すべきであるということを思い出させてくれます。お互いをいたわり合うという先入観が支配し、見せかけの優しさが蔓延する現代で、先祖代々交わされてきた大事な約束事がこの物語には宿っているのです。

兄弟神におわれて黄泉(よみ)の国へのがれた大国主(おおくにぬし)の命(みこと)は、須佐之男(すさのお)の命(みこと)の娘、須勢理姫(すせりひめ)と出会い、おたがいにひかれるのですが……。

あかね書房公式ホームページより

日本の神話 ⑥ うみさちやまさち

釣り針、小舟、浦島太郎を思わせる海の宮殿、結婚式、隼人踊りなど、ロマンに満ちた神話シリーズ最終巻です。妻・豊玉姫の「夫と子を思う気持ち」はまさに大和撫子であり、忘れられない想いを歌という形で妻に託す夫の姿には、日本神話ならではの精神性があります。

兄弟神の海幸(うみさち)と山幸(やまさち)は、それぞれ海での釣りと山での狩りを仕事にしていました。ある日、二人は道具を交換するのですが……。

あかね書房公式ホームページより

日本神話をもっと深く知ろう

日本神話の面白さは、美しい日本語で綴られた絵本を通して、さらに豊かなものになります。値段は少し高いと感じるかもしれませんが、古事記や日本書紀の神話に子どもたちが親しむのは有意義なことです。日本神話には愛と人生、そして喪失をテーマにした魅力的な物語がたくさんあり、日本では多くの習慣が神話に由来しています。気に入った物語は家族で楽しむだけでなく、親戚や友人にも共有してみましょう。

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